「おとなカタログ」で中学生に話しました。
神山町にある映像の会社、えんがわオフィスの谷脇さんが主催する「おとなカタログ」にゲストとして参加させてもらいました。
おとなカタログって?
以下、えんがわオフィスさんのサイトより抜粋。
「おとなカタログ」はスタッフ谷脇の「子供たちにはいろんな大人に出会い、多様な人生・仕事を知ってもらいたい」という思いから生まれました。
子供たちが様々な仕事をしている大人と出会い、語ることで、仕事について学び、夢の選択肢を広げる授業です。
3人の大人の講義・ワークショップ・トークを通して、ただ聞くだけでなく一緒に語り、活動しながら、大人をより身近に感じ、新しい発見につなげられればと思います。「今は多様性の時代で、価値観もいろいろで働き方もいろいろです。
これから先は更にその多様性も進んでいくでしょう。
神山町で働く私たちは、そんなことを当たり前のこととして感じています。
そんな時代に子供たちには、まずはより多くの選択肢を知り、そこから自分の価値観(ものさし)で、より自分らしい人生を楽しんで選んでいって欲しいと思います。
この授業が、ほんの少しでもその手助けになれれば幸いです。」(谷脇)
「おとなカタログ」にわたしが参加するのは今回で2回目。前回はよく知っている小学校だからそんなに緊張しなかったんだけれど、今回は中学生(しかも60人)…緊張しました。
前回の様子はこちら。
「食育」ってなんだ?
そうそう、「食育」って聞いても中学生はピンとこないかもしれない。わたしは興味がある分野だから「食」という漢字が入っていればすぐにセンサーに引っかかって前のめりになるけれど。
自宅で開催しているパン教室には、基本的には「興味がある」「知りたい」と思っている人が来る。そんな人たちに伝える時は、あまり難しく考えずに、自分が伝えたいことをそのまま伝えられる。でも、初めて出会うたくさんの誰かに伝えるっていうことは、とても難しいことだ。
何をどう伝えようかと頭の片隅で考えながら、ギリギリの前日に伝える内容を決めた。「食育」という視点から子どもたちに関わるようになった今のこと。職業として確立された資格や決められた枠組みはないけれど、今は自分ができることを楽しくやっているということ。
たった15分だったけれど、途中で眠そうになっている中学生を見ながら、あぁー、やっぱりもうちょっと違うこと話せばよかったなーとか、違う角度で話をした方がよかったんじゃないかとか、話し方がまずかったかなぁとか…、わたしなりにいろんなこと(ほぼ自分のプレゼンについての反省)に思いを巡らせた15分間とその後でした。
この後、簡単なワークショップをして終了。
わたしの他に2名のゲストのお話を聞けたことがとてもよくて、いい時間でした。
振り返り(Instagramから転載)
中学2年生60名を前に「どんな仕事をしているか」っていうのを話してきました。
自分が中学生の時にいまの自分はまったく想像していなかったし、これからもどうなるかはわからないけれど、最近は「こうなりたい」みたいな夢を描くよりも「こうありたい」という自分のあり方を考えていく方がしっくりくる。
それを考えると…
わたしのあり方は、小学校6年生の時の担任の先生にとても影響を受けている。クラスのいろんなことを全部自分たちで決めてつくっていく1年間だったのだ。何がよくて、どうしたくて、自分の考えはこうだ、みたいなのを出し合ってつくっていく過程が大事にされ、多数決なんてものは許されなかった。先生は「1人ひとりが意見を持っていない時に多数決なんてできないだろう、もし多数決をするのなら全員が自分の考えを言ったあとだ」とよく言っていた。たくさんの考えが出てくるけれど、そのどれもがちゃんと自分の意見だから、と認めてくれ(分からない、とかいま考えている、という意見も)、黒板に書かれた意見はそれが却下された意見であっても最後までみんなの目に触れる場所に居続けた。
簡単に、誰かが主導してモノゴトを決めていく過程は時間も手間もかからずとても効率的だ。けれど、わたしは中学校に入ったときにそのおとな都合の効率的な進め方にとても違和感を感じるようになっていた。
この経験はわたしの進路選択や職業選択にダイレクトに響いている。さらには仕事を変わった今も自分のあり方の根底に流れているし「こだわり」の中心にあるものかもしれない。
普段考えることのないこんなことを考えるのは、いま、職場に19歳のインターン生が2名来ていて、今日は職場体験の中学生が2名来て、何かしらそういうことを考えざるを得ない状況だから。
おとなたちが短時間のかかわりで子どもたちにできることなんてしれている。けれど、時間が許されれば、かかわる人たちの話をうんうんと聞きながら、その人の想いに寄り添う時間にしたい。それがいまのわたしのあり方だなーと思うのだ。
話が飛躍してしまったけれど、
この「おとなカタログ」でご一緒させてもらった島津さん(建築家)が話していた
「目の前のことをちゃんと、やっていく。自分のやり方で、やっていく」
がわたしにもとてもフィットした。捉え方はいろいろあるかもしれないけれど、特に後半のところ。迎合するのではなく、主張すべきところはする。それが相手とのコミュニケーション。そして、それが自分の仕事になっていく、ということ。
今回、
ワークショップで使う食材の調達を学校にお願いして準備していただいた。わたしが準備すれば欲しい材料は簡単に揃うのだけれど、そこにわたしじゃない人がかかわることで、おそらく、「わたしがなぜその食材を必要とするのか」みたいなことに少し考えを巡らせてもらえたのではないか、という点でとてもよかった。お伝えしたお店リストの場所へ(遠いのに)足を運んでいただいたようで、わたしがよく買い物をするお店の店員さんとも会話をされたらしい。
ワークショップでは「なぜその材料を使うのか」の部分は詳しく話せなかったのだけれど、そんなことも含めて「自分のやり方で」やっていく、ということが少しずつ、ほんとうに少しずつ、わかってきたところ。
前回のおとなカタログとはまた違う気づきがあり、わたし自身はいい経験をさせてもらえて、感謝!!
そう、やっぱり自分がやってきた経験からしかものごとは見えない。
「人の気持ちを想像する」なんて、難しくてできない。
自分が思ったり考えたりしていることは、自分の枠組みの中の世界でしかないのだなーと、そんなことを最近よく思う。
だから、いろんな経験をすること、いろんな人と出会うこと、自分の考えを伝えたり相手の思いを聞いたりしながら対話できること、それらが全部必要で、自分(わたし)の仕事をつくっているのだと思う。
もしも、次に「おとなカタログ」に参加させてもらえるラッキーな機会が与えられたとしたら、わたしは今回とは全く違う角度から話をしてみようと思う。「今やっている自分の出来事」を伝えるのではなくて、自分の考えを子どもたちに「体感」してもらえるような話がしたい。そういう場をつくりたい。
そんなことを考えている、夜更け。
おばが、テレビでも見たことのない「ドラえもん」を、わたしのためにせっせと編んでくれていた。「夢を叶えてくれるから」って(愛)。わたしの夢は大きいものも小さいものもいっぱいあるけれど、その一つはやっぱり目の前のことにちゃんと向き合うことで叶えられていくのかもしれない。
自分が感じた「違和感」からは逃げることがあるけれど、そうでない時には向き合って乗り越えていきたい。最近はもう、それしかない。
一つ歳をとったので、記念の宣言でした。おしまい。
un 樋口 明日香