20年来の相棒、直して使うアイロン台。
もう20年くらい使っているアイロン台がついに不調をきたした。と言っても、機能的な問題ではなくカバーが外れるという問題。
修理代より新品を購入する方が安い、だから買い換えるという選択をしてきたこれまでと同様、今回も新品に買い換えるタイミングだなーなんて、ネットでアイロン台を検索し始めた。
以前、NHKの番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」で「家電の命、最後まで 電器店主・今井和美さん」を見た。修理しているその姿が、画面越しではあったけれどとても生き生きと映った。今井さんの手にかかる「工業製品」は、そこにしかない固有の「モノ」に思えてくるから不思議だった。
ネットで新品のアイロン台を検索しながら、ふと、一緒にワークショップを開いた kuluska 直紀さんのお顔が浮かんだ。使えるものは最後まで使う。使うために直す(いい感じに)。あるものを使えるかたちにかえて使う。せっかく学んだ考え方を実際に自分のモノにしていかねば。直紀さんにカバーの付け替えをお願いすることに決めた途端、気持ちのおさまりどころが見つかったようでとても嬉しくなってきた。
アトリエ(近々お披露目予定だそう)に伺うと、先の住人の方が残されていたという「料理読本」が目に飛び込んできた。
そして、英字の小麦袋(布製・つぎはぎしてある)にも出合った。外国からの輸入品なのか、配給袋なのか。カッコいい。この布袋で何度も何度も小麦が行き来したのかと思うと、届いた小麦の重みをより一層感じられる気がする。
「モノ」を通して当時の暮らしを想像したり、その歴史的背景に考えを巡らせたりすることは、一般化された教科書で学ぶ「歴史」より、うんと身近で楽しい。
新しくなって戻ってきたアイロン台は、以前よりシンプルな生地になり、表情が変わった。
新しい顔が、とてもうれしい。
直紀さんに「ボタンホール用の凹みがあるのは珍しい」と言われて初めて構造の特徴に気づいた。
第2世代のこのアイロン台、仲良くしたい。