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2017-09-16

【学校の家庭科室でパンを焼く】みんなで一緒に作って食べられるパン。

白崎茶会認定のパン先生unアンです。

小学校で勤務していた最後の年、市の研究会では家庭科部に所属していました。そこで定期的に開いている研究会の研修講師を私が務めることに(!!)。「パン先生」になったことを知ってらっしゃる先生方が偶然にも担当だったため、このような機会をいただきました。

子どもたちが、学校で、自分の手でつくるパン。

現場で先生方がすぐにでも実践できるように、家庭科室にある器具や用具、設備を使ってパン焼きをすることにしました。

私にとっては記念すべきパン先生デビューの場。

その時の様子をお伝えしますね。

研修の流れ

  1. 自己紹介・「パン先生」とは。
  2. (前日に仕込んでおいた生地を)成形する。
  3. 成形した生地を発酵させる。
  4. 地粉の話・食材の話をする。
  5. 焼成(フライパンを使って)
  6. みんなで試食する。

研修時間:13:30~16:00

場所:小学校の家庭科室

参加者:小学校の家庭科担当教諭

「地粉(じごな)」ってなあに?

わたしがみなさんにお伝えするパンづくりには「地粉」を使います。

「石臼挽き地粉」九州産

聞きなれないこの「地粉」の説明から始まる「食材の話」が、パン先生の大事な役目だと思っています。

地粉=ニッポンの粉。別名:うどん粉。たんぱく質量で分類すると中力粉の部類に入ります。

先生方を前に、粉の種類を説明しているところ。@家庭科室

白崎裕子さんの著書『にっぽんのパンと畑のスープ』(はじめに)より

にっぽんのパンとはずばり、うどん粉のパンです。日本には「うどん粉(地粉)」と呼ばれる素晴らしい小麦があります。はるか昔から、日本人は二毛作などでうどん粉を栽培し、家庭ではごく当たり前にうどんを打っていました。うどん粉で野菜の天ぷらを作り、ご飯が足りなければすいとん汁を作り、おやつの蒸しパンやかりんとうも、みんなうどん粉で作っていたのです。現在のように、料理によって何種類もの粉を使い分けることはありませんでした。
(中略)
日本の風土が育んだうどん粉でしか作れない味と食感。どこかなつかしくて、だけどあたらしいおいしさのパン。わたしたち日本人の体質と味覚に合ったパンです。
(中略)
フランス人がフランスの地粉でフランスパンを焼き、インド人がインドの地粉でチャパティを作るように、わたしたちも、わたしたちの地粉で、未来に残すべき「にっぽんのパン」を焼きましょう!

その思いを私も胸に抱き、パン先生として活動を始めたのがunの始まりです。

やはり、「地粉」のおいしさは群を抜いている。この「地粉」でパンはもちろん、焼き菓子を作ったり、麺を打ったりもしています。一つの粉で、すべての粉料理が作れるのも、地粉の良さです。

unの”パンの授業”で、みなさんにお見せしている「日本全国・粉ものMAP」

昔から日本人に親しまれてきた麺類も、おやつも、地域によってバラエティ豊かで、現在もその土地の特産品となっているものばかりです。こんなにバラエティ豊かな食べ物が集まっているにもかかわらず、このなかには「パン」がありません。

中力粉はパンには不向きという認識があったためか、はたまた家庭にオーブンが普及していなかったためか…(すみません、そこはわたしもちゃんと調べられていませんが)、これまで「地粉のパン」が表に出ることはありませんでした。実際、unの教室に来てくださる方も地粉のパンはもとより「地粉」そのものの呼び名を初めて聞くという方が多いです。

もちろん、わたしも「地粉」という粉の存在を知ったのは、白崎茶会に通い始めてからです。

お菓子づくりが大好きだったので、最初は地粉の焼き菓子作りからスタートし、今ではすっかり地粉の魅力にとりつかれ、パンはもちろん、麺を打つのも地粉。

地粉の良さを自分自身がもっと知りたい、地粉の特性を生かしたパン作りをしたい、という気持ちから白崎茶会の免許皆伝パン先生クラスに入級。ハードな特訓を経て「パン先生」に認定されました(2015.12)。

ちょっと寄り道しましたが、話を元に戻して、家庭科室でのパンづくり。

みんなと一緒にやりたいのは、これなんです!

日本人が焼く日本のパン。ごくごく自然な流れです。

オーブンがなければフライパンで焼く。

小学校でやるなら、道具や器具はすべて家庭科室にあるもので作る。

難しい作業も必要ありません。

子どもたちと一緒に作ることが可能です。

あとはもう、徳島県産の「地粉」が手に入れば、言うことないのですが。もっと欲を言えば、自分たちの学校で育てた小麦からパンが作れると最高!

白崎裕子さん『白崎茶会のかんたんパンレシピ』

研修の日はこちら「白崎茶会のかんたんパンレシピ」から、フライパンで作れる「直焼きマフィン」をご紹介しました。

パン作り:実践編 ①成形

パンには発酵時間が必要です。この生地は12時間以上発酵させてから成形した方がいいので、研修では前日に仕込んでおいた生地を成形するところからやっていただくことにしました。

一次発酵が終わった生地。グルテンネットを見てもらいました。美しい。

この生地を成形し(具材を包む)

成形:ゆるくなった生地を伸ばし、中身を入れて包んでいきます。

成形:伸ばした生地の中心にメープルシュガー&くるみを入れ、包んで口を閉じます。

これはやや難しいですが、中身を包みやすいものにすると子どもたちでもできます。

粉+ナッツの組み合わせや甘栗など、液体や汁が出ない素材・食材にすると包みやすくていいかもしれません。本番はまったく写真を撮る余裕がなかったので、試作時の写真でご紹介(下写真)。

例えば、くるみとメープルシュガーの組み合わせなら、こんな雰囲気です(試作時の写真)。

パン作り:実践編 ②発酵

包んだ生地は、二次発酵(成形後の生地に湿度と温度をかけて膨らませる)へ。家庭科室に発酵器はないので、簡易発酵器をつくります。

大きめのタッパーの蓋部分を下にして使ったり、下写真のようにビニール袋(大)と霧吹き(手動)で発酵器代わりにしたり。

ビニール袋と背の高いティーポットで簡易発酵器の完成。時々霧吹きでシュッと水分補給すれば完璧です。

寒い日でしたが、お日様の当たる家庭科室のあったかスポットだったので、発酵が進みました。

このティーポット、家庭科室にあったものなんですが、「不思議の国のアリス」に出てきそうなティーポット。かわいいですよね。この小学校の5年生は、このティーポットで「お茶会」(5年生の家庭科の最初の調理実習は”お湯を沸かす”だったと思います)ができるんだなぁ〜と、羨ましい気持ちに。

本来の生地づくりの手順とはちぐはぐになってしまいますが、こちらの生地を二次発酵(さらに湿度と温度をかけて生地を膨らませる)させている間に、持ち帰り用の生地づくりにチャレンジしました。

パン作り:実践編 ③ポリ袋で生地をつくる方法

子どもたちが簡単に作れる方法として「ポリ袋だけで生地をつくる方法」をご紹介しました。

地粉でつくるパン生地と、強力粉+薄力粉(いずれもオーガニックのもの)でつくるパン生地、粉は手に入りやすい方を準備していただければOKです。

ポリ袋の中で生地の元となる粉と酵母をフリフリ。水分を入れてフリフリ。オイルを入れてモミモミ。

ポリ袋を使うメリットは、ざっと…

・直接手で扱わないので、衛生面の心配が少ない。(ご自宅で手づくりを実践されている大人には、手を使うことをおすすめしています。)

・ボウル等の調理器具を使わなくてもできる。

・「ポリ袋を破らないように」の掛け声で優しく生地を扱うことができる(作業がわかりやすい)。

の3点。

この方法なら、ボウルに粉を入れて捏ねたり、台の上で生地を伸ばしたりしなくてもいいので、手がベトベトになることもなく、生地をいためることもなく、小学校の低学年の児童でも生地をつくることができます。

ポリ袋を使った生地づくりの工程

  1. 粉と酵母を入れてフリフリ
  2. 水を入れてフリフリ
  3. オイルを入れてモミモミ
  4. 10分休ませて
  5. 海塩を入れてモミモミ
  6. 10分休ませて、完成!

文字にすると「フリフリ」と「モミモミ」だけで完成する生地ですが、実際は「腕がけっこう疲れるね」「思ったより力がいるかも…」という反応。一生懸命やっていただいたからこその反応でした。

つい集中して生地づくりに向かってしまいますが、「ながら作業」でも可能なゆる〜い生地づくりなので、懲りずに復習して欲しいな、と心の中で思いながら。。

ポリ袋で生地をつくっている間に、2次発酵させていた生地がいい感じに膨らんできたので、いよいよ最終工程、焼成です。

パン作り:実践編 ④焼成

家庭科室にある、昔ながらの鉄のフライパンで焼いていきます。蓋もあると便利です。

鉄のフライパン(←これがポイント!)に3〜4個ずつ並べ、順番に焼いていきます。

焼き時間は10分少々。焼いている間に手の空いた先生方が片付けを始めてくれ、焼きあがる頃にはすべてきれいに片付いているという素晴らしいチームワークでした。

こんがりいい色に焼きあがりました。

火を扱う場所では必ず安全第一で実施してくださいね。高学年の児童なら調理実習も経験しているので復習にもなるはず。

そして、鉄のフライパンの扱い方を教えるチャンスでもあります!ちゃんと使い方を知っていれば長持ちする、一生ものの調理器具。おまけに鉄分も摂取できるなんて。

この直焼きマフィン、白崎茶会ではいつもストーブの上でじっくり焼いていきます。ご家庭にストーブがあるなら、冬場にぜひおすすめしたいパンの焼き方なのです。

全部焼きあがったところで、お待ちかねの試食タイム。

焼いている途中にアンケートを記入してもらっていたので…タイミングが合わずにちょっと焦げてしまいました。おいしい紅茶とともにいただきました。

焼きたての地粉の直焼きマフィンを味わってもらいながら、一人ずつ今日の感想を話してもらいました。

先生方の感想

  • 工程について
    • パンづくりは「難しい」と思っていたけれど手軽にできるのがわかってよかった。
    • 子どもたちでもできる調理実習だと思った。
    • 教えやすい、伝えやすい、新鮮な作り方だった。
    • 家庭科室でパンが焼けることがわかった。
    • ポリ袋を使った生地づくりなので洗い物が少なくて済む。
    • 片付けも子どもたちでできる。
  • 使う素材(地粉・材料)について
    • 地粉を知らなかった。
    • 食に対する真摯なこだわりが聞けて、周りの食を見直してみようと思った。
    • アレルギーの子どもがクラスにいるので、これなら卵や乳製品アレルギーの子どもも一緒に楽しめると思った。
  • 課題
    • 「パンづくり」が教育課程の中に位置付けられていないので、実施する際には位置付けが課題。

各学校の先生方からご意見をいただき、わたしも勉強になりました。

アレルギーの子どもがクラスにいるので、これなら卵や乳製品アレルギーの子どもも一緒に楽しめると思った。

と言うように、お子さんに多いのが卵や乳製品アレルギー。クラスの中に数名いる場合もあると思います。

何も「制限」することなく、みんなが楽しい。おいしい。これって、大事なことですよね。

これがかなうパン作りが、できるんです。

パンづくりの位置付けを、どうするか

先生方のご意見にあったように、教育課程の中にパンづくりの位置付けはありません。どこに位置付けて実施するのかは、考える必要があると思います。

わたしが実施したのは総合的な学習の時間「もち米づくり」の単元。もち米を使った調理実習の一つとして子どもたちから「パン」ともち米を合わせたいという声があがり、この直焼きマフィンを取り扱いました。

パン生地をつくるところから、子どもたちでやってみます。

担任していたクラスだったので、時間の微妙な調整が可能でした。調理実習の前日に生地づくりをし、12時間以上発酵させることに。

翌朝。1次発酵後の生地。いい感じです。

生地の膨らみを見て、子どもたちもにんまり。「よかった〜」

「もち米調理実習」の時間は、8チーム(40人)の調理部隊がそれぞれのチームで別のメニューをつくるという、なんともカオスな状態。もちろん、それまで作り方や材料を調べて、手順通りできるように段取りは組んでいるのですが、紙上でできていても、実際にできるとは限らず。

写真なんて撮れる瞬間はありませんでした。

直焼きマフィンの中にもち米が入ったもの、参考までに、こんな感じです。

事前に家で試作したもの。

パンの中にもち米を蒸したものを入れるという、なんとも斬新なパンですが、

「めっちゃうまい!!」

「サイコー」

「家でも作ろう〜」

などなど、子どもたちの反応は概ね良好。やってよかったなとホッと一息の瞬間でした。

パンチーム以外のチームも

・五平餅・いちご大福・もちピザ・おはぎ・おこわ・…などなど、おいしく完成。

自分たちで育てた「もち米」が様々なバリエーションで調理される過程を見て、味見できた子どもたち。自分たちの手で作って、味わった料理は記憶にしっかりと刻まれたことでしょう。

うれしかったのは、料理が完成した時に洗い物や片付けがすべて終わっていたチームがあったこと。なんて手際がいいんだろう…。(その逆ももちろんありましたが。)経験すればするほど慣れてきたり、工夫ができたりするのが調理実習の良さだし、周りの友だちの動きを見て学べることもたくさんあります。

自分たちの給食を自分たちでつくる、なんていうカリキュラムがあるといろんな工程で学びのチャンスがあって楽しいのにな〜。


要は、自分たちが「作りたい」と思ったものを、そこにあるものでアレンジ(場所・時間・材料)できるかどうか、だと思います。

「オーブンがないからパンは作れない」

「時間がないからパン作りは無理」

「地粉が手に入らないからできない」

と言ってしまうとそこでおしまいですが、

子どもたちが「作ってみたい!」と言ったものを、周りの大人がどこまでフォローしたり応援したりできるのか。これは調理実習に限ったことではないと思います。

大人も柔軟に、そして好奇心旺盛でありたいものです。

…とかなんとか言っちゃって。

そんな偉そうに言える立場でもなく、自分自身は硬い頭で凝り固まっているのを感じる日々。

何にもしばられない自由な発想、そして突き進む好奇心、子どもたちと一緒にいるとどんどん刺激されるのですがね。たまに子どもたちと触れ合うことで、そういう感覚を呼び起こされる気がしています。


profile

樋口 明日香 Asuka Higuchi

鳴門教育大学初等教育教員養成課程学校教育専修 卒業
大学卒業後、神奈川県内で小学校教諭として勤務。
在勤中に教育相談コーディネーター研修として横浜国立大学臨時教員養成課程に在学。
勤務校にて5年間、教育相談(特別支援教育)コーディネーターとして勤める。
チームを組んでいた臨床心理士の先生から「子どもに寄り添う」考え方を学び、大きな影響を受けた。
2016年3月 退職
現在は 白崎茶会認定パン先生unアン講師、Food Hub Project 食育係として、身の周りの小さなことから「食」を考え、発信している。
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