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2019-04-20

異なる文化を知る

同僚が機会をつくってくれ、シェフインレジデンスで滞在中のアマニーと3人でランチに行った。

【Amanny Ahmadさんのプロフィール】FHPサイトより
NYをベースに活動する、アーティスト・シェフ・ライター・食の活動家・旅人。アメリカ・ユタ州で生まれたパレスチナからの移民。15歳まで、パレスチナとユタを行き来して育つ。
自分自身の家族がパレスチナで受け継いできた食文化を残したいという想いから、料理を独学で学び始める。NYの美術大学を卒業後、自身の食の学びを深めながら、イベント等で料理をするように。
食は、階級・年齢・言語・教育などと関係なく、人とコミュニケーションをとれる最高のツールであり、彼女にとっての“アート”。現在は土地に根差した植物や食文化をリサーチすることに興味をもっている。

子どもが大好きという彼女、子どもたちに限らずあらゆる世代の人たちと考え方や思いを交わすためにまずはその人たちの言語を知ろうとしているといい、ところどころ簡単な日本語を織り交ぜながら話す(かわいい)。

今わたしがやっていること(食育)の一部を簡単に伝えると、それをやることでどんな効果が生まれると思っている?と尋ねられ、わたしは「食べものと子どもたちが仲良くなる」と伝えた。

彼女は、食べものは「文化」であるとも言っていた。
「戦争」は人の殺し合いというイメージがあるけれど、それだけじゃないと。自国でずっと食べてきたものが食べられなくなること、たくさんの情報が入っているその土地の「種」が奪われてしまうことや使用を制限されることもつまりは独自の文化が奪われること。一度奪われると二度と取り返せないことからこれもまた「戦争」だという言い方をしていた。

「一粒の種から芽が出て育っていく、それだけでワクワクする」
「種はすごいの!」
という彼女の言葉を聞いた瞬間、涙が止まらなくなってしまった。

たとえば、食育ってなんだろう?と考える時に、畑を準備して耕して種をまいて…ということもあるし、食や農に関する知識を…ということもあるし、家庭でつくる料理を…ということもあると思う。いろんな「教育的な意味」をつい求めてしまっている自分に気づく。

彼女の話を聞いていると、彼女がそこにいれば、この思いを子どもたちの前で語るだけで十分だと思ったし、大事なことはとてもシンプルなことなんだと自然と納得できて、つまりはその、彼女の圧倒的な存在感にびっくりしたのです。

都会の食育

神山町は畑や田んぼが近くにあるけど、日本の都心部ではどんな食育をしているの?と尋ねられた。

土地利用の仕方が違うから都会で「育てる」活動はなかなかに難しい。そこに住む大部分の人たちは、自分たちから離れた場所で育てられたものを食べていること、その流通システムについて理解するのが精一杯だろうと伝えたわたしに、それでもその狭い場所で工夫して育てる経験をすると分かることはたくさんあるとアマニーは言った。そこで育つ子どもたちが例えば畑や田んぼが広がる地域に出向いたとしたら、その土地で採れたものをその場で食べる経験はできる。その経験をして都会に帰ったとき、考え始めることはいくつかあるだろう、と。

作り手さんと直接やり取りができるマルシェはそういった意味でもっともっと広がるといいのに、とも言っていた。

食べることを通して、じぶんと、その周りがつながっているということを体感できる経験はとても大事なことだと思う。それは、大人が「教える」というよりは、日常のなかで触れる様々な体験を通して子どもたちそれぞれが「感じる」ことができていければいい、と思うのだ。

樋口 明日香

パンの授業(現在お休み中/再開時期は未定)

再開の際にはこちらのブログでご案内いたします。

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