小学校の給食部会研修会へ
「研修をお願いできませんか」とお電話をいただいたのは6月のこと。小学校の先生からのお電話でした。unのホームページを見て連絡をくださったそうで、せっかくの研修であれば「楽しく学びになる研修」にしたいから、中身を考えるところから一緒に相談してほしいという内容でした。徳島市、名西郡の給食担当の先生方(栄養教諭含む)が集まる研修会。わたしがその研修内容にふさわしいかどうか…よりも「やってみたい」の気持ちが勝ちました(!!)。給食担当の先生方と出会いたい、と思ったのです。
研修開催前に3回ほどお会いして相談させていただき、内容は ①Food Hub Projectの食育の取り組みをお話しすることと、②“無敵の即打ちうどん”をつくる、に決まりました。
テキストはもちろんこちら↓↓
先生方が15名ほど集う場、小学校の家庭科室には冷房が設置されていないそうで(子どもたちが気持ちよく学習できるように学校環境設備にもっと予算つけてーーー!(心の叫び))。思案した結果、朝日産業さんのクッキングスタジオをお借りすることになりました。(設備・備品も勢揃い。素敵な会場を快く提供してくださり…感謝しかありません。)
小学校と連携した「食育プログラム」のはなし
わたしの話した内容はここでは割愛しますが( Food Hub Project の活動日誌でご覧いただけます)、小学校と地域をつなぐ役割について実践を交えながらお話しさせていただきました。先生方とのやりとりで残っていることを何点か記しておくと次のような感じです。
●産食率● かま屋で出している「産食率」の話や、昨年の神領小1年生の取り組みを紹介しました。徳島市の産食率について伺ったところ、やはり同じ算出方法で食材の「徳島県産」の割合を出しているそう。数値は50%前後だとおっしゃっていました。
●教科横断の食育● ある小学校の栄養教諭の先生より、他教科と関連させながら楽しく取り組める食の授業(クイズ形式)を実施しているという紹介がありました。
●地域の特産品● 大豆の栽培から豆腐づくりまでを行う食育プログラムに豆腐職人さんが参加しているのを見て「自分のまちでもやってもらおう!」と話していらっしゃる先生がいました。
学校の先生だけではない「まちの大人」が授業に入るってとてもいいなぁと思うのです。学校に多様な子どもたちがいるように、社会にも多様な大人たちが暮らしていて、生き方も考え方も様々。そんな大人たちとの出会いの場になれば素敵ですよね。
神山小麦で“無敵の即打ちうどん”づくり
さて、後半の研修はうどんづくり。前半と同じくテーマは「地産地食」です。何かみんなで食べられる実習ができるといいよね、と栗岡先生と相談して「うどん」をつくることにしました。うどんに使う粉は「中力粉」、Food Hub Project つなぐ農園で栽培している「神山小麦」を使うことにしました。神山小麦は神山町の白桃家で70年以上自家用の味噌や醤油をつくるために栽培されていた小麦です。今年度からは、地域の高校生の授業の一環として耕作放棄地を整備して小麦を育てるプロジェクトも進行中。今後、栽培から加工までのプロセスもより見えやすくなっていくのかなぁと期待しているところです。
粉以外の材料は、水、酢、海塩。これらも徳島でつくられたものや徳島産のものを使いました。
水:剣山の天然水
酢:山屋酢醤油店さんの純米酢(徳島市佐古)
塩:鳴門産
さ、麺を打ちます。こねずに、踏まずに、できるんです。
4つのグループ、それぞれとても美しい麺が仕上がりました。
ざる、釜揚げ、つけ麺、お好みの加減に茹で上げます。
「地産地食」がテーマなので、先生方には麺に合う地元食材を持ってきていただき、それぞれ紹介していただきました(地域で採れたものの他、地域のお店で買ったものも含まれています)。ミニトマト、すだち、鰹節、ねぎ、ミョウガ、さつまいも、オクラ、きゅうり…などなど。
茹で上げた麺の上に、お好みの地元食材をたっぷりのせていただきます。
「もちもちしている」「甘い」「噛めば噛むほどおいしい」「旨味を感じる」「醤油だけで十分おいしい」などなど、神山小麦本来の風味とあわせて、「粉から簡単に作れておいしいんだ!」ということを体感していただけたこと、よかったです。茹で汁がこれまたとてもおいしくて、びっくりされている先生方がいました。麺の塩分と粉の旨味に加え、わずかなとろみがついて葛湯のような感じになるのですが、そのままでもゴクゴク飲みたいほどにおいしいし、少しの醤油とすだちを絞ればさらにおいしい。あー至福。
大昔から、人のいる場所に食文化が育ってきたのだとすると、「食べる」プロセスしか体験していない現代の大部分の人たちにとって、「育てる→つくる→食べる→つなぐ」プロセスの体験は、とても新鮮。なにかしら眠っている感覚が刺激されるような気がするのはわたしだけではないはず。加えて、これらの体験を通して少しばかり豊かな気持ちになれる気がするのです。食欲は人の生理的欲求の一つ。「食べる」ことの周辺事象をいかに「自分ごと」にしていくか、そこが食育なんじゃないか…と今は思っています。
今わたしは小さなまちで保育所から高校までの食育のプログラムを考える立場にいます。なにが正解か分からないので「まずやってみる」の繰り返しですが、公教育(地域の学校)と連携して「育てる、つくる、食べる、つなぐ」体験の機会をつくることが役目だと思っています。家庭や学校、まちのなかで「食」に関する共通体験が積み重なっていくことがどれほど影響のあることなのかはまだわかりません。でも、毎日口に入れる食べ物が “育つ場所” と自分自身が “育つ場所” が近ければ近いほど、「生きる」と「食べる」こととの親和性は高まるように思うのです。
今回の研修の機会を与えてくださったこと、栗岡先生と出会えたことに感謝して、わたしはまた「なんのための食育?」を考え続けていきたいと思います。