toggle
2017-07-26

学校教育のなかの「食育」

パン先生un@徳島です。

最近、仕事で学校視察に行かせていただいたり、周りの友人・知人らと「食育」について話す機会があったり、子どもたちの「食」について考えることが多かったので、学校の「食育」について考えてみました。

「食育」とは…(法律から)

食育基本法(平成17年6月17日)前文より
二十一世紀における我が国の発展のためには、子どもたちが健全な心と身体を培い、未来や国際社会に向かって羽ばたくことができるようにするとともに、すべての国民が心身の健康を確保し、生涯にわたって生き生きと暮らすことができるようにすることが大切である。
子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付けていくためには、何よりも「食」が重要である。今、改めて、食育を、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付けるとともに、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育を推進することが求められている。もとより、食育はあらゆる世代の国民に必要なものであるが、子どもたちに対する食育は、心身の成長及び人格の形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたって健全な心と身体を培い豊かな人間性をはぐくんでいく基礎となるものである。
一方、社会経済情勢がめまぐるしく変化し、日々忙しい生活を送る中で、人々は、毎日の「食」の大切さを忘れがちである。国民の食生活においては、栄養の偏り、不規則な食事、肥満や生活習慣病の増加、過度の痩身志向などの問題に加え、新たな「食」の安全上の問題や、「食」の海外への依存の問題が生じており、「食」に関する情報が社会に氾濫する中で、人々は、食生活の改善の面からも、「食」の安全の確保の面からも、自ら「食」のあり方を学ぶことが求められている。また、豊かな緑と水に恵まれた自然の下で先人からはぐくまれてきた、地域の多様性と豊かな味覚や文化の香りあふれる日本の「食」が失われる危機にある。
こうした「食」をめぐる環境の変化の中で、国民の「食」に関する考え方を育て、健全な食生活を実現することが求められるとともに、都市と農山漁村の共生・対流を進め、「食」に関する消費者と生産者との信頼関係を構築して、地域社会の活性化、豊かな食文化の継承及び発展、環境と調和のとれた食料の生産及び消費の推進並びに食料自給率の向上に寄与することが期待されている。
国民一人一人が「食」について改めて意識を高め、自然の恩恵や「食」に関わる人々の様々な活動への感謝の念や理解を深めつつ、「食」に関して信頼できる情報に基づく適切な判断を行う能力を身に付けることによって、心身の健康を増進する健全な食生活を実践するために、今こそ、家庭、学校、保育所、地域等を中心に、国民運動として、食育の推進に取り組んでいくことが、我々に課せられている課題である。さらに、食育の推進に関する我が国の取組が、海外との交流等を通じて食育に関して国際的に貢献することにつながることも期待される。
ここに、食育について、基本理念を明らかにしてその方向性を示し、国、地方公共団体及び国民の食育の推進に関する取組を総合的かつ計画的に推進するため、この法律を制定する。
何よりも「食」が重要である。
そうはっきり明記されていることに、改めて背筋がピシッとなります。

学校でやっていくこと。

小学校に勤務していた時には、学校の外側(外部)から「食」にアプローチする方が食育がスムーズに進むんじゃないか、と思っていました。実際、教職を辞して外に出てみると、それとは逆に、学校だからこそできるんじゃないか、学校だからこそやる意味があるんじゃないか、そう思える面があることに気づきます。なぜなら、「住んでいる地域」「同年代に生まれた」という条件だけで集まっている集団は、学校の他にはないからです。学校でやることは、すべての子どもたちに行き渡るのです。

文部科学省のホームページより、全国にある小学校の数を調べてみました(下図:表9)。
*公立学校:都道府県、市町村区など、地方公共団体が設立・管理している学校
小学校の設置者別学校数

【文部科学省:学校基本調査】Ⅱ 調査結果の概要 [学校調査,学校通信教育調査(高等学校)]

年々数が減ってきていますが、全国に約20000校もの小学校があります。

6年間という子ども時代の大部分を過ごす小学校。そこで過ごした子どもたちが、10〜20年後には、社会の一員として日本をつくっていくようになるんですよね。様々な属性の子どもたちが一同に集まるおもしろい場所です。

もう一つの特徴はほとんどの小学校が「学級担任制」のシステムによる学級(クラス)単位での活動を中心としている場所であること。

学級数のデータ(下図:表10)から、児童が属する学級(クラス)は全国に27万1,764(平成28年のデータ)。これ、データに含まれていない場所で学んでいる集団も含めると、もっと増えます。

小学校の編成方式別学級数

【文部科学省:学校基本調査】小学校の編成方式別学級数

その数だけ先生(おとな)がいて、それぞれの集団がつくられています。

わたしは教諭という立場は退きましたが、今でも子どもたちの活動や反応を想像しながらいろいろと考えることは楽しいです。

実際に授業はできないので、せめて、このBlogの場でできることをやっていこうと思っています。

❶ 学校でできる「食の授業」を考えてみる。→これならできそう。

(→ ❷ 先生方が授業でもやってみよう、と思う。)

(→ ❸ 子どもたちに伝わっていく。(毎年、伝わる子どもたちは増えていく。))

もちろん❷と❸は、わたしができることではありませんが。

子どもたちへ

かかわる大人が、子どもたちの学びを摘み取らないように。一方的に与えることのないように。
よいかかわりとは何か。教育って何なんだ。
教員を辞めてからも、そう自問自答しながら、過ごしています。
最近出合った本を読んでいると、教員をやっていた頃より、より楽に、より自由に考えられるようになってきました。
相変わらず、子どもたちのことを考える時間は、わたしにとってはとても楽しい時間です。

『公教育をイチから考えよう』リヒテルズ直子×苫野一徳(日本評論社)

『公教育をイチから考えよう』「はじめに」から
 「公教育」とは、たんに公立学校で行われる教育のことではありません。私立の学校や大学も含み、国や地方自治体が公共の制度・政策として実施する教育全体を指しています。
 「公教育」はまた、近代法治国家の成立と密接な関係をもっています。すべての人間に平等に認められた「発達の権利」を保障すべく、国が法律に基づいて実施するものであると同時に、若い人々がやがて社会の成員として未来を築き支えるに足る力を身につけることにより、社会そのものが安定することをも目指しています。
(中略)
…公教育とは、元来、堅固に動かぬものではなく、現場実践の積み重ねと、現実世界の動向、そして未来への確たるヴィジョンとの間を往還しながら、常によりよいものへのダイナミックに変化し続けるはずのものだからです。

公教育の中で行われる「食育」も、いろんな地域で、様々に工夫された取り組みがされているようです。

最近本屋さんで手にとってワクワクした芦屋市の給食のレシピ本(下図)。芦屋市では自校式給食の伝統が守られ続けており、小学校全校と中学校1校に給食室設置、各校専属の栄養士が在籍という環境。
メニューは他の市町村と変わらぬ1食分250円(小学校)で提供され、子どもたちからだけでなく、保護者からも大人気の給食だそう。レシピだけではなく食育コラム、調理師さんや栄養教諭の先生方の紹介もあり、読んでいて楽しい本です。

『芦屋の給食』カナリアコミュニケーションズ

『芦屋の給食』「はじめに」より
…芦屋の自慢の一つが、
「豊かな食体験は、子どもたちの味覚と心を育む教育である」
をモットーに、徹底した手づくりでつくっている給食。
「食べることは生きること」
子どもたちは給食から心豊かに生きるヒントをたくさん学ぶことができます。
食べ物は、体をつくり、心をつくり、人生をつくります。
子どもたちにとって“食べること”はとても大切なことなのです。

『ようこそ自由の森の学食へ』山本謙治監修 岩田ユキ漫画

以前HPを拝見して気になっていた学食ですが、漫画になって登場していたので読んでみました(すぐに読み切れるのが漫画のいいところ)。食事内容が素晴らしいのはもちろんですが、周りのおとなのかかわりや言葉がけが参考になります。さらにその子の成長を「食」を通してサポートするという点で、「食育」のあり方が学べます。

こちらの自由の森学園のHP(食生活部)もバシバシと思いが伝わってくるHPですので、ぜひ。

→ 日本で一番まっとうな学食

いつかこの学食に行ってみたい!


「学校だからできない」「今はできない」ではなくて、やれる方法を、やれる形で進めている実践例もたくさんあることに、大きな力をもらいます。

だからわたしも、自分ができることを、自分ができる範囲で、でも、コツコツと進めていくことが大切なんだな、ということ。
このBlogという場を通して、食について、学校でできることについて、家庭でできることについて、わたしができることについて、考えていきたいと思います。

パン先生として教職員対象の研修を実施(2016)この時の様子はまた別Blogでまとめたいと思います。

profile

樋口 明日香 Asuka Higuchi

鳴門教育大学初等教育教員養成課程学校教育専修 卒業
大学卒業後、神奈川県内で小学校教諭として勤務。
在勤中に教育相談コーディネーター研修として横浜国立大学臨時教員養成課程に在学。
特別支援学校教諭の免許状を取得。
勤務校にて5年間、教育相談コーディネーターとして勤める。
コーディネーターの役割を通して臨床心理士の先生から「子どもに寄り添う」考え方を学び、大きな影響を受けた。
2016年3月 退職
現在は 白崎茶会認定パン先生unアン講師、Food Hub Project 食育係として、身の周りの小さなことから「食」について考えているところ。
【取得教員免許状】
・小学校教諭(一種)
・中学校教諭(音楽・一種)
・高等学校教諭(音楽・一種)
・幼稚園教諭(二種)
・特別支援学校教諭(一種)
パンの授業(現在お休み中/再開時期は未定)

再開の際にはこちらのブログでご案内いたします。

関連記事